細胞には、膜で囲まれたさまざまな細胞小器官・オルガネラが存在し、異なるオルガネラの間で相互作用をしながら連携して機能を発揮している。オルガネラ間のコニュミケーションを効率よく行うためには、情報を集約して受け渡す必要があり、この情報交換の場として異なるオルガネラが直接接触する領域の重要性が指摘されている。このようなオルガネラ接触場の中で、近年特に注目を浴びているのは、ミトコンドリアと小胞体が接する領域(MAM:mitochondria-associated membrane)である。これまでMAMは脂質代謝やカルシウムの受け渡しの場と考えられていたが、近年になって、細胞増殖、細胞死、オートファジーといった多彩な現象に関与することが報告され、さらに、その機能異常と疾患との関連性が明らかになりつつある。本研究では、研究参加者らが発見したMAM機能を司るタンパク質を足がかりに、MAMの構築と機能を分子レベルで解明し、MAM機能の破綻による疾患を検証する。本研究期間の間に、オルガネラ局所場の研究を世界的にリードする組織作りを進め、将来的にMAMを標的にした治療法開発を推進できる組織としての基盤を構築する。